石材店の知られざる日常
「石屋さんって、普段はどんな仕事をしているの?」と聞かれることがあります。
一般的には「新しいお墓を建てる」か、あるいは最近増えている「墓じまいで取り壊す」のどちらかだと思われがちです。
しかし、実は私たちの日常は、もっとこまやかで、まるで「お墓のお医者さん」のように寄り添う仕事に溢れています。
石材店で15年、営業と現場監督としてお墓を見てきた私が、あまり知られていない石屋の舞台裏をお話しします。
家族の歴史に立ち会う「彫刻」と「納骨」
新しい方が亡くなられたとき、お墓の墓誌(ぼし)にお名前や命日を刻む「彫刻」の手配や、お遺骨を大切にお墓の中へお納めする「納骨」の立ち会いは、日常のとても大切な仕事です。
特に納骨の際は、重い石の扉(拝石)を動かし、カロート(納骨室)の中に異常がないかを事前に確認して、丁寧に執り行います。
ご家族の深い悲しみと、これからの安心の瞬間に立ち会うこの仕事は、何度経験しても背筋が伸びる思いがします。
輝きを取り戻す細やかなメンテナンス
お墓も家と同じように、年月が経てば少しずつ傷んできます。
そうしたお墓を蘇らせる日常のケアも、私たちの役目です。
・ペイント入れ: 墓石に彫られた文字や家紋の色が落ちてしまった部分に、新しく色を入れ直します。これだけで、お墓の表情は見違えるほど明るくなります。
・目地(めじ)直し: 石と石の継ぎ目にあるコーキング(接着剤)は、雨風や紫外線で劣化します。ひび割れた古い目地を剥ぎ取り、新しく打ち直すことで、墓石の継ぎ目に水が侵入するのを防ぎます。
こうした地味に見える細かな手仕事が、墓石の寿命を何十年も延ばすのです。

大自然の力に立ち向かう改修・リフォーム
時には、より大きな「改修・リフォーム」の現場に臨むこともあります。
お墓を脅かすのは、時間の経過だけではありません。
激しい地震、長年の地面のゆがみ、そして意外と多いのが「近くの木の根」です。
強大な植物の力で、何トンもある石の土台が押し上げられ、ズレてしまうことがあるのです。
これらをクレーンなどを使って一度安全に解体し、頑丈に組み直す「再据付(さいすえつけ)工事」を行います。
また、近年お客様から喜ばれるのが、「防草(ぼうそう)施工」です。
「毎回、お墓参りの草むしりが大変」というお悩みに応え、お墓の敷地に雑草の生えにくいシートやコンクリートを施工し、その上にキレイな玉砂利を敷き詰めます。
お墓のお医者さんとして
私が現在、行政書士として墓じまいや改葬の手続きをお手伝いしている根底には、この15年間の「お墓のお医者さん」としての経験があります。
「もうお参りが大変だから墓じまいしかない」と思い詰めているお客様に対して、私はただ書類を作るだけではありません。
「このお墓なら、防草施工をして目地を直せば、お参りが楽になって、まだまだ守っていけますよ」という、現場を知るプロだからこその別の選択肢を提案することもできます。
壊すことが正解とは限りません。
直して守ることも、形を変えて引き継ぐことも、すべてはお客様とご家族の未来のための選択です。
~ 遠くの「心配」より近くの「再会」 ~